最近、多くのメーカーから「寝る時専用のブラ」が発売されていて、そこには多くのメリットがうたわれています。また、その売り上げも年々伸びているといわれています。
しかし、夜寝る時にブラをつけることについては、乳がんリスクをはじめ健康に関して疑いを持つ声もあります。
ここでは、「寝る時用のブラ」がおよぼす影響や、その選び方についての疑問を徹底的に解明します。
寝る時にブラをつける割合ってどのくらいなの?
現代では、昼間は大多数の人がブラをつけていると思われます。しかし、寝る時はどうなのでしょうか。
ブラをつける人とつけない人では、どちらが多いのでしょうか。
大手下着メーカーの調査結果
2007年のトリンプの調査(回答数3255人)、2013年のワコールの調査(回答数300人)において、寝る時にブラをつける人の割合が報告されています。
トリンプ…32.7%
(参照:トリンプ調査:「睡眠と下着」に関するアンケート調査)
ワコール…35%
(参照:ワコール調査:女性の夜の美容習慣に関する調査)
いずれにおいても、寝る時にブラをつけている人は、およそ3人に1人でした。つまり、寝る時にはブラをつけない人の方が、約6~7割で多数派だということになります。
トリンプの調査(2007年)
寝る時にブラをつけるかどうかという設問に加えて、寝る時用のブラやショーツを持っているかという被験者全員への設問があり、その回答は以下の通りです。
- 持っている…3.8%
- 持っていない…96.2%
(参照:トリンプ調査:「睡眠と下着」に関するアンケート調査)
この結果から、ブラをつけて寝ると答えた人であっても、ほとんどの人は昼用のブラをつけて寝ていることがわかります。
ワコールの調査(2013年)
寝る時にブラをつけると答えた人に、つけているブラのタイプを尋ねています。
- 夜専用のブラ…11.5%
- 通常のブラ(ワイヤー入り)…53.7%
- ノンワイヤーのブラ…30.6%
- カップ付きキャミソール…22.3%
- 古くなったヨレヨレのブラ…8.3%
- その他…4.1%
寝る時にブラをつけている人のうち、ほとんどの人がやはり昼用のブラをしています。
寝る時にブラをつける・つけないことによる影響は?
下着メーカーの調査の結果によると、寝る時のブラについては、つけない派が大多数を占めています。しかし、寝る時用のブラの売り上げが伸びているということは、つける人が増えつつあるとも考えられます。
では、寝る時にブラをつける・つけないは、どちらがよいのでしょうか。
つける派の人もつけない派の人も、それぞれの理由があってそうしていると考えられます。以下に代表的な意見をあげてみましょう。
- 締めつけられて痛い
- 体の締めつけが眠りを浅くすると聞いた
- 一日中締めつけているのは体に良くないと思う
- もともとブラが嫌い
- 寝る時にブラをすると、乳がんになるリスクが高くなると聞いた
- 寝ている時に形が崩れたら嫌
- つけていないと不安定
- 寝ている時に、バストが横に流れると垂れやすくなる
- 朝につけるのが面倒、着替えが楽
それぞれの意見を見ると、ブラをつけない派の人は、「ブラの締めつけ感」や「乳がんのリスク」など健康面の問題をあげています。
一方、つける派の人は、朝の着替えが楽だという意見もありますが、おおむね「バストの形」など美容面からの理由をあげています。
ブラと乳がんの関連について
「寝る時にブラをつけると乳がんになりやすい」という説は、一時期テレビなどでも取り上げられて、大変話題になりました。しかし、現在では、この説は「医学的には全く根拠がない」といわれています。
そもそもこの説は、1995年に米国で執筆された「Dressed to Kill:The Link Between Breast Cancer and Bras」という書籍が発端になっています。
なぜなら、この書籍のなかで、1日12時間ブラをつける人は、ブラをつけない人と比較すると、乳がんの発症率が約25倍、24時間つける人は、約125倍に上昇するとの調査結果が発表されていたからです。
しかし、この書籍の著者は、医師でもありませんし、がんの研究者でもなく、単なるサイエンスライターの夫妻です。したがって、この本自体も学術論文などではなく、一般書籍なのです。
内容が衝撃的であったばかりに、一気に世界に広まったというわけです。
ですが、その後、米フレッドハッチンソンがん研究センターが、ブラジャーと乳がんの関連性を完全に否定しています。
この研究結果は、米医学誌「Cancer Epidemiology,Biomarkers & Prevention」の2014年9月5日号で報告されています。
研究チームが行った調査は、もっとも乳がんになりやすい年代(55~74歳)の女性(乳がんの人590人、乳がんでない469人)を対象に、細かい項目のもと行われました。
そして、すべの項目において、ブラジャーと乳がんの関連は見られなかったと発表しています。
また、日本の医師の見解も同じで、ブラジャーと乳がんとの関連を否定しています。
ブラの役割
寝る時には、ブラをつけるかつけないかで意見が分かれますが、本来ブラは女性の体にとってどのような役割をしているのでしょうか。
日本人女性のバストは、ほぼ90%の脂肪と10%の乳腺で形成されています。それをクーパー靭帯というコラーゲンでできた繊維の束が支えています。
クーパー靭帯の働きによって、バストは形をキープでき、下垂を防ぐことができるのです。
しかし、クーパー靭帯は、激しい揺れや振動、過度のバストアップマッサージなどによって、傷んだり切れたりします。そして、一度切れてしまうと再生はしないといわれています。
そうなると、バストを支えることができず、形を保つことができなくなってしまいます。
ブラは、日々の振動でクーパー靭帯が伸びてしまったり、切れてしまったりしないように、バストをしっかりと固定する役割をしています。
寝るときのブラによる影響
寝る時にブラをつけない場合とつける場合とでは、体にはどのような影響があるのでしょうか。
ブラをつけない場合
仰向けに寝ると、バストは横に広がり、横向きに寝ると、バストはワキの方に流れます。そうなれば、寝た状態であっても、クーパー靭帯はバストの重みによって伸びてしまいます。
その結果、形が崩れたり垂れたりする可能性が大きくなります。
ブラをつける場合
ほとんどの人が寝る時も昼用のブラをつけていますが、実は、それでは効果は得られません。なぜなら、昼用のブラは、立っている状態でバストを支えるようにできているからです。
立っている時と寝ている時では、バストへの重力の向きが異なります。バスト自体の動きも全く違います。
昼用のブラで寝ると、寝ている時の動きに合わせてバストを支えることができず、バストがブラからはみ出してしまったり、寝返りを打っているうちに、ずれてしまったりすることがあります。
そのうえ、締めつけられているので熟睡できず、睡眠に悪影響を与えることもあるのです。
寝る時用のブラが全てを解決
寝ている時のさまざまな体への影響を考えると、寝ている時のバストの状態を考えて作られた夜専用のブラをつけることが、体にとっては最善の方法だという結論にたどり着きます。
また、ワコールとオムロンヘルスケアの共同研究では、寝る時用のブラをつけて眠ることで、入眠までの時間が短くなり、ぐっすりと深く眠っている時間や眠りの満足度がアップするという実験結果が報告されています。
寝る時のブラジャー選びのポイントは?
美容面、健康面ともに効果があると考えられる寝る時専用のブラですが、ただつければよいというものではありません。
寝る時用のブラを選ぶ際には、以下のポイントに気をつけましょう。
寝る時用のブラには、ホックやワイヤーはついていないことが多いのですが、もし、ついているものがあったとしても、肌への刺激を避けるためには、ホックやワイヤーのないものを選びましょう。
綿100%がおすすめです。リラックスして眠るためには、肌触りや通気性、吸湿性が大切です。
胸全体を包み込むタイプが理想で、バストを全方向から支える機能が必要です。そのためには、立体的な裁断や設計になっているブラを選びましょう。
昼用のブラのように締めつけ感のあるものは、痛みやストレスの原因になります。アンダー部分に、十分な伸縮性があるかどうかを必ずチェックしましょう。
肌にあたる金具やワイヤーがなくても、縫い目の肌へのあたりが気になることがあります。縫製の良いものや縫い目がないものを選びましょう。
メーカーによって、同じサイズでも大きさは微妙に異なるものです。しっかりと採寸をし、必ず試着をしてから購入しましょう。
小さすぎても大きすぎても、効果は望めません。それどころか、体に合ったものを選ばないと、かえって型崩れの原因になってしまうこともあるのです。
メーカーによって値段は大きく異なります。同じ寝る時用のブラであっても、1000円以下のものから1万円を超すものまで幅広くあります。
値段だけで判断するのではなく、ポイントをしっかり見極めて、自分に合ったものを選ぶことが大切です。
まとめ
寝る時用のブラは、寝ている間のバストを支え、型崩れを防いで形の良いバストを保つように作られています。使用を続けることで、バストアップ効果が期待できるともいわれています。
また、睡眠を妨げないように設計されている点も大きな特徴です。
美容と健康を考えれば、寝る時には寝る時専用のブラをつけることが、もっとも理に適った選択だといえそうです。