菊芋という、ちょっと聞き慣れないお芋をご存知でしょうか?その成分が美容や健康に良いと最近になって注目を浴びている食べ物です。
これまでは飼料用の作物として主に使われていたので、あまり一般に流通している物ではありませんでした。
しかしその健康効果が注目され始めたことから、日本でもようやく健康食品として普及してきているようです。
菊芋にはどのような効果があるのか、どのようにして食べればいいのかなどをご紹介します。
菊芋に期待できる効能は?
菊芋は「芋」と名がついていますが、芋と違って主成分はでんぷんではありません。「イヌリン」という成分が糖尿病の予防に役立つのでは、と期待されています。
血糖値の上昇を抑えるイヌリン
イヌリンは「天然のインスリン」とも呼ばれる多糖類です。ごぼうやニラにも含まれている成分ですが、菊芋は乾燥粉末にするとおよそ6割がイヌリンで占められます(生だと15%程度)。
イヌリンは糖類の仲間でありながら、人が持っている酵素では分解できない成分であるため、食べてもほとんど吸収されることなく排出されてしまいます。つまり、食物繊維と同じような働きをするのです。
糖の吸収と血糖値の上昇を抑える
水溶性食物繊維と同じように、胃腸でゲル状になり、食べ物を包みながら腸を進んでいくので、糖の吸収を抑えてくれるのです。
結果として血糖値の急上昇を防いでインスリンの過剰分泌を抑えます。これが糖尿病の予防に役立つといわれるイヌリンの働きです。
ダイエットにも役立つ
糖類を食べて血糖値が上がると、それを下げようとしてインスリンが分泌されます。
インスリンは過剰に分泌されると、余った糖を中性脂肪に変えて蓄えようとします。イヌリンはインスリンの分泌を抑えますから、中性脂肪をためにくくなり、肥満の予防につながるというわけです。
糖質制限をしていると、炭水化物だけでなく、糖質の高い野菜も控えますから、じゃが芋やさつま芋も食べられない場合があります。
芋類が好きな人にはとても辛いでしょうが、そんな時に菊芋が代わりになります。菊芋の糖質はほとんどがイヌリンですからカロリーも低く、100g当たり35kcal、1個当たり(50g)なら18kcalです。
糖質制限中だけど芋が食べたい、血糖値が心配だけど芋が好き!という方には菊芋がおすすめです。
便秘の解消
水溶性食物繊維と同じような働きで腸の蠕動(ぜんどう)運動を促して便秘の解消にも役立ちます。便秘が改善されればダイエットにも役立ちますね。
また、イヌリンは腸で発酵することにより、フラクトオリゴ糖に形を変えます。フラクトオリゴ糖は善玉菌の餌になることで知られていますが、悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌を増やすことに役立ちます。
善玉菌が増えることで有害物質の生成も抑えてくれるので、腸内環境も整え肌荒れの予防にもいいですね。
血液サラサラ作用
イヌリンには血液をサラサラにして、高血圧や動脈硬化を防ぐ働きも期待できますので、生活習慣病の予防に役立つでしょう。
むくみによいカリウム
カリウムは利尿作用により余分な水分や塩分を排出して身体の巡りをよくし、むくみを予防するのに役立ちます。
菊芋100g当たり610mgのカリウムが含まれていますが、納豆やほうれん草と同じくらいありますし、カリウムが多いといわれるバナナやメロンの1.5〜2倍近い量になります。
セレンの抗酸化作用
セレンというミネラルには強い抗酸化作用があり、細胞の酸化を防ぎます。細胞が酸化すると、血管が弱くなったり、動脈硬化を起こしやすくなるなど健康面での不安が大きくなります。
また、シミやくすみの原因にもなるので、セレンの抗酸化作用は美肌を作る上でもとても大切な物です。
ビタミン・ミネラルで新陳代謝を促進
糖の代謝をサポートするビタミンB1、たんぱく質や脂質の代謝に欠かせないビタミンB2、その他、カルシウムやマグネシウムなどビタミンやミネラルも豊富に含まれていて、身体の新陳代謝をサポートします。
特に亜鉛は新しい細胞を作るのに不可欠ですから、お肌のターンオーバーを促進するためにも必要なミネラルです。
菊芋の食べ方・使い方は?
菊芋の食べ方や選び方、保存法などをご紹介します。こんなに使い道があるの?と驚くでしょう。
菊芋の食べ方
菊芋はクセがほとんどないので、じゃが芋のように色々な調理法で楽しむことが出来ます。皮はごぼうのようにとても薄いので、特に剥かなくても食べられます。また、アク抜きの必要はありません。
生食、加熱料理、どちらにも向いています。芋ではありませんが、生ではシャキシャキ、加熱するとホクホクして、芋の様な感じで食べられます。
生で食べる
じゃが芋とは違い、生でも食べられます。皮をむいてスライスしたり千切りにしたりして、サラダや和え物に入れてみましょう。
生の菊芋を薄く切って、普段作っているサラダに添えるだけです。シャキシャキとした食感と甘みがありますので、醤油ベースのドレッシングとの相性がピッタリです。
炒め物
皮をむいてスライスするか、太めの千切りにして野菜炒めに加えてもいいですし、きんぴらのように甘辛く炒め煮にしても美味しいです。菊芋だけでバター炒めにしてもいいですね。
材料
- 菊芋 200g
- ニンジン 1/2本
- ごま 適量
- ごま油 大さじ1
- 醤油 大さじ1
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 砂糖 小さじ1
作り方
- 菊芋とニンジンを千切りにします。
- 醤油、酒、みりん、砂糖を混ぜ合わせておきます。
- フライパンにごま油をひき、菊芋とニンジンを入れて、しんなりするくらいまで炒めます。
- フライパンに2の調味料とごまを混ぜ合わせれば完成です。
シャキシャキとした食感とほんのりとした甘みが、きんぴらの材料としてもすごくマッチしていて美味しかったです。
揚げ物
素揚げにして軽く塩をふるとポテトフライのようで美味しいですし、衣をつけてフライにしてもいいでしょう。スライスして揚げるとポテトチップスのようになるので、おやつにもおすすめです。
菊芋に片栗粉をまぶして揚げるだけ。揚げることで甘みが強くなり、ホクホクとした食感がたまりません。
薄くスライスした菊芋を180度の油で揚げるだけ。サツマイモのような甘さで、すごく美味しかったです。
ただ、スライスして油で揚げると素揚げ以上に、カロリーが高くなるので、ダイエット中の方は少しオリーブオイルなどを垂らしてからオーブンで焼く方がいいかもしれません。
スープ
生の菊芋をブレンダーなどで攪拌させて、スープに混ぜてみてもよいでしょう。
材料
- コンソメスープ 300ml
- 菊芋 200g
- 塩・コショウ 少々
コンソメスープ(300ml)に対して、菊芋(200g)を入れて、塩とこしょうをしただけ。さすがにこれだけだと、菊芋メインの味で甘みが強く、美味しいとはいえませんでした。(普通に飲めますが。)
材料
- コンソメスープ 150ml
- 菊芋 100g
- 玉ねぎ 半分
- ニンニク 1片
- 牛乳 100ml
- パセリ
- 塩・コショウ 少々
菊芋メインになってしまうと飲みにくいという方もいらっしゃると思いますので、その場合は、玉ねぎとニンニクをみじん切りにして炒めてから、コンソメスープと牛乳、攪拌した菊芋を混ぜ合わせると美味しく飲むことができました。
漬け物
保存を兼ねて、甘酢漬けやぬか漬け、味噌漬けなどにするのもおすすめです。味噌漬けは、好みの味噌に好きな量のみりんを加えるだけ!簡単なのでぜひ試してみて下さい。
- 表面の皮をごぼうの皮をむく時のようにこそげ落とします。
- よく洗って水気を拭き取ります。
- 味噌床に漬け込みます。
- 漬けてから2~3日なら浅漬け、長く漬ければ古漬けが楽しめます。
赤味噌でちょっと濃いめの味付けにしてもいいですし、白味噌で甘めに仕上げても美味しいです。
粉末を利用する
粉末やパウダー状になった物だと保存もききますし、取り入れるのもの簡単です。自分で粉末にするのが面倒な方は、粉末状の菊芋が通販で販売されていますので、そちらを利用してみては如何でしょうか。
見た目は、きな粉のような粉末で、味もきな粉に近い味なので、色々な食べ物と相性が良さそうですね。
お茶として飲む
お湯に菊芋パウダーを溶かすことで簡単にお茶として飲むことができます。菊芋茶という市販のお茶も販売されているくらい定番の摂り方です。
小さじ2杯程度入れてみました。色はしっかりと出ていますが、ごぼう茶を薄めたような味で、普通のお茶として飲むことができました。
ヨーグルト・グラノーラに入れる
菊芋と乳酸菌の相性は抜群で、ヨーグルトに振り掛けるだけでお手軽に腸活ができます。ヨーグルトとの味の相性もいいですね。
下は低脂肪牛乳を入れたグラノーラの中に菊芋パウダーを振り掛けてみました。きな粉のような香ばしい味がプラスされて、違和感なく食べることができました。
飲み物に入れる
ジュースやスムージーなどの飲み物に入れてもいいですし、味噌汁やスープに入れてもいいでしょう。
どちらかというと、コーヒーや紅茶よりも味噌汁のように味がついている物の方が粉っぽさが気にならないのでおすすめです。イヌリンは水溶性なので、汁ごと飲むのと余すことなく摂取できます。
ただし、味噌汁をお椀に入れてから、菊芋パウダーを振り掛けるとダマになってしまいますので、気になる方は、味噌汁を作る際に、事前に水に溶かしてから作るとよいでしょう。シェイカーに入れて振ればダマにならずに綺麗に溶けますよ。
シチューを作った後で気づいて菊芋パウダーを振り掛けてみましたが、美味しく食べることができました。
シチュー以外にカレーなんかでも大丈夫そうです。
お米に入れて炊く
ご飯を炊く時に、1合当たりスプーン1杯の粉末を加えます。米を研いでから水を加える時に、その水によく溶かしてから入れて下さい。
粉末がやや茶色いので、ご飯もほんのり色がつきますが、お米に粘り感が出ます。
色が茶色いので味が気になる所だと思いますが、若干ゴボウご飯のような味がありますが、ほとんど白米で食べるのと大差ありませんでした。
パンケーキやクッキーに混ぜる
パンケーキを作る時に混ぜて食べるのもおすすめです。その他、クッキーやパンなど幅広く使えます。
ホットケーキの素があったので、試しに菊芋パウダーを加えて作ってみたところ、少しチョコレートが入っている様な風味がプラスされて、以外にも美味しく食べることができました。
[surfing_voice icon=”https://mrslife.jp/wp-content/uploads/2016/09/hennsyuubu.jpg” name=”編集部” type=”l” bg_color=”eee” font_color=”000″ border_color=”eee”]実際に、菊芋と粉末タイプの商品も試してみましたが、やはり粉末タイプは使い勝手がとてもいいですね。
継続して菊芋を食べようと考えているのであれば、粉末タイプを選ぶことをおすすめします。
もしヨーグルトやグラノーラなどを食べる方、あと味噌汁を飲む方でしたら、ただ混ぜ合わせるだけなので、続けやすいと思います。
[/surfing_voice]美味しい菊芋の選び方と保存方法
見た目は生姜に似ています。じゃが芋のように地下茎に栄養を蓄えて太くなったものです。丸みがあって、鮮度の良い、実の締まったものを選びましょう。
菊芋を買ったら、土を付けたまま、新聞紙などに包んで冷蔵庫で保存しましょう。保存は2週間程度です。
もしくは皮をむいてから冷凍保存します。解凍すると生食には向かなくなってしまうので、凍ったまま煮物などに入れるといいでしょう。
皮を剥いてスライスし、乾燥させて保存するという方法もあります。ざるなどに広げて天日干しし、完全に乾いたら密閉できる入れ物で保存して下さい。
使う時は切り干し大根のように水で戻して使います。お湯で煮出せば菊芋茶になります。汁物などに入れるなら、そのまま入れてしまってもかまいません。
乾燥させた物をミルサーなどを使って自分でパウダーを作ることも出来ます。こうするとかなり長期の保存が可能になります。
菊芋を食べる際に注意点は?
血糖値を上げにくく、ダイエットにも役立つ菊芋は、食べる際にどのようなことに注意すれば良いのでしょうか。
糖尿病の治療は出来ない
菊芋の血糖値に対する効果は「急上昇させない」ということであって、「食べれば血糖値が下がる」というものではありません。これは食物繊維の効果と同じ、あくまでも健康食品の効果であって薬ではないのです。
俗に、「糖尿病によい」「皮膚によい」などと言われているが、ヒトでの安全性、有効性については信頼できるデータが見当たらない。
更なる研究が待たれるところであり、菊芋を食べれば糖尿病が治るわけではありません。ただ、血糖値を上げないようにすればインスリンの分泌を抑えることが出来ますから、糖尿病の予防には役立つでしょう。
イヌリンアレルギー
イヌリンのアレルギーは、件数的には少ないようですが、起きた場合は重症化する恐れがあるので、初めて食べる場合は少ない量から試して下さい。
安全性については、短期間、適切に用いれば経口摂取で安全性が示唆されているが、人によってはイヌリンを含む食品で重篤なアレルギーを起こすことが知られている。
人によってはお腹が張る
食物繊維と同じ、イヌリンもたくさん摂りすぎると胃がもたれたり、お腹が張ったりすることがあります。イヌリンの副作用として以下のことが報告されています。
副作用としては胃腸のガス、腹部膨満感、胃痙攣がよく知られている (94) 。これらの症状は用量が30 gを超えるとさらに多くなる (94) 。
菊芋100g当たり15g程度のイヌリンが含まれていますから、200gを超えなければお腹への影響は心配しなくても良さそうです。
新鮮なうちに食べないと太る
菊芋の中にはイヌリンを分解するイヌリナーゼという酵素が含まれています。ですから長期保存するとイヌリンがイヌリナーゼに分解されて、「果糖」に変換されてしまうのです。
そうすると、イヌリンの効果はおろか、果糖をたっぷり摂ることになり、逆に脂肪を溜め込みやすくなる可能性もあります。菊芋はもし手に入れたら早めに食べることをおすすめします。
身体に合わないと感じたらやめる
どんなに健康に良いという食材でも、体質に合わない場合はあります。試してみて何か不調を感じたりしたら食べるのをやめて下さい。
まとめ
糖尿病は肥満ぎみの人がかかりやすいと思われていますが、実はそうではありません。日本人を含むアジア人は肥満が少ないにも関わらず、インスリンの感受性が低下しやすく、糖尿病を発症しやすいという研究結果もあります。
痩せていても、健康診断で見つかりにくい「隠れ糖尿病」の危険は常にあるので、運動不足や食べ過ぎが気になっている人は特に血糖値のコントロールがとても大切です。
菊芋の血糖値を上げない、という作用は糖尿病の予防だけでなくダイエットにももちろん役に立ちます。日々の食卓に菊芋や菊芋パウダーを取り入れて、血糖値と上手につき合っていきましょう。