血糖値は、もともと一定の値で推移しています。しかし、健康診断などで「血糖値が高め」と診断される方は年々増加傾向にあります。
なぜ、血糖値は高くなってしまうのでしょうか?血糖値が高くなる原因と、なぜ治療が必要なのかについて、ご紹介していきます。
血糖値が高い原因は?
血糖値は、食事や運動に影響を多少受けますが、本来はほぼ一定の数値で推移します。よって、一日の中でも「血糖値が高い時間帯」によって、原因は異なります。
今回は、「食前や空腹時」「食後」にわけて、それぞれみていきましょう。
[surfing_su_note_ex note_color=”#ffffff”]食前や空腹時でも血糖値が高い場合は、血糖値をコントロールする機能が低下している可能性があります。
本来、前回の食事から時間が空いていて、お腹がすいた状態である空腹時は、一日の中で一番血糖が低くなります。よって、空腹時でも血糖値が基準値よりも高い場合は、すでに糖尿病を発症している可能性が高くなります。
食後の血糖値は、食事の影響を受けるので、正常であっても多少は血糖値が上がります。よって、食後のみ血糖値が基準値を超えてしまう場合は、食前に血糖値が高い場合に比べ、血糖値のコントロール力は衰えていない可能性があります。
そのため、運動や食事内容に気を付ければ、ある程度血糖値を下げる効果が期待できます。
[/surfing_su_note_ex]血糖値が高いとどういった症状が出るの?
血糖値が高い状態が続くと、体内の血糖をコントロールする力はどんどん落ち、身体に様々な症状が出現します。
中でも注意した方がよいのが下記の3つの症状です。心当たりがある方は、早急に病院で診察を受けることをお勧めします。
[surfing_su_note_ex note_color=”#ffffff”]本来、血中の糖は、身体を動かすためのエネルギーとして使います。しかし、糖尿病になると、身体は血液の糖からエネルギーを補給しにくくなります。
よって、体にため込んでいた脂肪を分解することで、エネルギーを体内に入れようとします。その結果、急激な体重減少が起こります。
血糖値が高い状態が続くと、身体は血糖値を少しでも減らそうと様々な器官に働きかけます。そのうちの一つとして、たくさんの水分を取り込もうとします。これが病的な「のどの渇き」となります。
血糖が高い状態が続くと、血液の中のエネルギーを体内へ取り込むことができません。よって、体はエネルギー不足となってしまいます。その結果が「体がだるい」「疲れやすい」といった症状になります。
[/surfing_su_note_ex]昏睡状態から命の危険もあり
上にあげたような症状が出ていてもさらに治療をせず、放置してしまっていると、命の危険も出てきます。
血糖が異常に高い状態を長期間にわたり放置していると、体の中にある脂肪を多量にエネルギーに変換する過程において、身体に有害な物質が体内にたまりやすくなります。
有害物質がたまりすぎると、意識混濁や呼吸困難など、生命にかかわる症状が出現し、最悪死に至るケースも存在します。
一番怖いのは、「無症状」
実は、血糖値が高め、という状態だけでは、ほぼ症状は出現しません。「血糖値が高いだけで症状が起こる」ということは、血糖値が高め、ではなく重度の糖尿病であり、血糖値が200以上どころか、四桁近くになった時に起こります。
[surfing_su_note_ex note_color=”#def3fc”]実際に、私が医療現場で経験したケースです。
毎年の健康診断にて血糖値が高めだと指摘されていたにも関わらず「仕事だから」と放置していた30代の男性がいました。意識消失にて搬送されてきた時、血糖簡易測定器では「Hi」としか表示されず、血液検査にて血糖値が800以上だとわかりました。
[/surfing_su_note_ex]この方のようにならないためにも、「症状がないうちから治療を開始すること」が、非常に大切となります。
血糖値が高い状態が続くとどうなるの?
血糖値が高い状態が続くと、身体の様々な部位に障害が現れます。それらの障害について、見ていきましょう。
高血糖によって引き起こされる「動脈硬化」
全身に張り巡らされている血管は、もともとはゴムのように弾力があります。しかし、血糖値が高い状態が続くと、血管の内側から少しずつ負荷をかけ、血管そのものを硬く、そしてもろくしてしまいます。これが「動脈硬化」と呼ばれる現象です。
糖尿病による合併症は、この「動脈硬化」が原因によって起こります。
「眼」「腎臓」「神経」の三大合併症
糖尿病には、三大合併症と呼ばれるものがあります。それが、「眼」「腎臓」そして「神経症状」です。
これら3つの器官は、それぞれ進行すると患者さんにとって非常に重い影響を及ぼしかねません。よって、異常の早期発見、そして進行を遅らせるための治療が必要となります。
三大合併症の器官に共通していること、それは「細く、細かい血管によって構成されている」という点です。
高血糖が続くと、細く、細かい血管ほど詰まりやすくなります。そのため、細かい血管が張り巡らされている眼や腎臓、神経は症状が進行しやすく、そして深刻な影響を及ぼします。
[/surfing_su_note_ex]命に直結する「脳」「心臓」の病気
高血糖が原因で起こる恐ろしい病気としてあげられるのが「脳」そして「心臓」という、まさに人が生きる上で必要不可欠な二つの臓器の病気です。
「脳」は主に脳の血管が詰まってしまう「脳梗塞」を引き起こす要因となります。そして、「心臓」は、心臓を動かす栄養を届ける、冠動脈と呼ばれる細い血管が詰まることで「心筋梗塞」を起こす原因となります。
[surfing_su_note_ex note_color=”#def3fc”]脳外科、そして循環器の病棟にそれぞれ勤務していた際、入院患者さんの多くが糖尿病でした。糖尿病を早期に発見し、治療することは、自分の命を守ることにつながります。
[/surfing_su_note_ex]血糖値が高い時の再検査って何するの?
健康診断などで「血糖値が高い」と診断されると、糖尿病に対する様々な検査が行われます。その理由と、検査内容についてみていきましょう。
糖尿病と診断される際に実施される検査
最初に行われる検査「耐糖性検査」
健康診断などで、血糖値について「再検査」となった場合、医療機関でまず行われるのが「経口75gブドウ糖負荷検査」です。
これは、食事を抜いた状態で採血をした後、75gのブドウ糖が入った検査専用の飲み物を飲みます。この飲み物は非常に甘いため、飲んだ患者さんからは「トラウマになるほど甘い」と言われるほどです。
検査用の飲み物を飲んでから120分後まで、30~60分ごとに採血を行い、「インスリンがどれだけ出ているか」「血糖値はどう変化しているか」を検査します。この検査によって、血糖値が異常な上がり方をしていたら、「糖尿病」と診断されます。
採血から実施される「血液検査」
糖尿病と診断されるにあたり、耐糖性検査と同時に行われるのが、血液検査です。耐糖性検査では、何回か採血を行いますが、最初の採血の際に血液検査も同時に行います。
検査の結果、以下の数値であれば糖尿病と診断される可能性が極めて高くなります。また、一回の検査でどちらかのみ基準値以上だった場合は、時間をおいて再検査を行うこともあります。
[surfing_su_note_ex note_color=”#ffffff”]血糖値の値では、1、空腹時の血糖値が126mg/dl以上である 2、血糖値が随時200mg/dl以上であることが基準となります。
HbA1c(ヘモグロビンエーワンシ―)とは、糖と結合したヘモグロビンのことで、糖尿病だとこの数値が高くなります。HbA1cが6.5%以上だと、糖尿病の疑いが強くなります。
[/surfing_su_note_ex]外来での指導でも改善が認められない場合
血糖値が高く、外来での指導でも改善が認められない場合、検査入院を勧められることがあります。
これは、高血糖によって合併症が起こっていないかどうか検査をするとともに、糖尿病についての指導を行うことが目的となります。そのため、糖尿病による入院を、「教育入院」と呼ぶこともあります。
検査入院で行われること
糖尿病にて入院した場合、期間は高血糖の程度にもよりますがおおよそ1週間程度となります。プログラムは病院によって異なりますが、大まかに以下のようなことが行われます。
[surfing_su_note_ex note_color=”#ffffff”]専門医の指示のもと、眼、腎臓、神経についての詳細な検査の他に、心臓や脳など、重要な臓器の血管が詰まっていないかどうか、検査を受けます。合併症の発症が認められた場合には、専門の医師による治療が開始されます。
これ以上血糖が高い状態にならないよう、栄養士による栄養指導、理学療法士による運動指導、看護師による生活指導などが行われます。糖尿病の進行具合によっては、薬による治療も行われるため、薬剤師による薬物指導も行われることもあります。
[/surfing_su_note_ex]まとめ
糖尿病は、高血糖そのものが怖いのではなく、実は放置による合併症の発症が恐ろしい病気です。糖尿病が原因となって起こる症状はとても多く、糖尿病は万病のもとだという言葉もあるほどです。
血糖値が高めと診断された場合は、すぐに検査を受けて、自分が糖尿病でないかどうかを診断してもらうことが大切です。ぜひ一度、医療機関を受診してみてください。