「血糖値を下げる」となると、まず頭に浮かぶのは「食事制限」そして「運動」の二つではないでしょうか。しかし、実際に食事制限や運動を日常生活に組み込み、習慣化することは大変です。
そこで注目されているのが、血糖値を下げる効果が期待できる飲み物です。今回は、血糖値を下げる効果が期待できる飲み物、そして効果をさらに高める時間帯やタイミングについて、ご紹介していきます!
血糖値を下げる効果が期待できるお茶は?
日常生活になくてはならないお茶。同じお茶でも、せっかく飲むのなら、血糖値を下げる効果が期待できるものを飲みたいですよね。
そこで、糖尿病療養指導士として特におススメしたいお茶を、ご紹介していきます!
一番のお勧めは「緑茶」
ある研究で、緑茶を毎日飲んでいる方とそうでない方の糖尿病を発症する割合を調べました。すると、毎日飲んでいる方の発症する割合はそうでない方に比べて優位に低いことが分かりました。
差が出た理由の一つとしてあげられているのが、緑茶に多く含まれている「ポリフェノール」の存在です。
ポリフェノールは食物繊維の一種であり、食べ物の消化を遅らせる効果があります。血糖値は食べ物の消化によって上昇するので、消化を遅らせることで血糖値の上昇も抑える効果が期待できます。
お茶選びで確認したいポイント
現在、たくさんのお茶が「血糖値を下げる効果が期待できる」として進められています。しかし、中には医学的データが存在していないものも含まれています。
「桑の葉」や「ルイボスティー」なども、よく血糖値を下げるお茶として紹介されています。しかし、これらは緑茶が勧められる理由である食物繊維などの「血糖値の上昇を抑える」効果ではなく、「血糖を下げるための体の仕組みに働きかける」効果を期待しています。
血糖を下げる仕組みに働きかける効果は人によって差が大きく、糖尿病の進行度によっても効果には差が出ます。また、効果が期待できる成分は非常に微量となっています。
そのため、例えラットなどによっての研究によって血糖値が下がったというデータがあったとしても、それが人に対しても効果を期待できるかどうかは疑問です。よって、血糖値を下げるお茶を調べる際には、広告の謳い文句ではなく、「医学的データがあるかどうか」をまずチェックされることをお勧めします。
[surfing_su_box_ex title=”「血糖値が下がる」に惑わされないで!” box_color=”#054ead”]糖尿病患者さんとお話しをする中で、よく出てくるのが「民間療法」です。
「これを飲んでいれば血糖値が下がるといわれた」といって、あるお茶を愛飲されている方がいらっしゃいました。
残念ながらその方は血糖値のコントロールが非常に悪く、診療後毎回食事や運動についてお話をさせていただいていました。
しかし、「このお茶を飲んでいれば、ケーキとかおいしいものをいくら食べても血糖値が上がらないの」とお茶について自信満々で言われたときには、思わず椅子から転げそうになってしまいました。
[/surfing_su_box_ex]「これを飲めば血糖値が下がる」というお茶は、ありません。そして、そのような表記をすることは「薬事法違反」であり、法律違反でもあります。
ネット上で明確に「血糖値が下がる」と書いてあるお茶については、十分注意されることを、看護師として強くお勧めします。
血糖値を下げる効果が期待できる飲み物は?
お茶の他にも、お店やCMでよく「血糖値を下げる」効果をうたっている飲み物が多数売られています。これらはなぜ、血糖値を下げる効果が期待できるのでしょうか?
注目されている「難消化性デキストリン」
近年注目されているのが「難消化性デキストリン」です。これは主にトウモロコシやジャガイモに含まれている食物繊維の一種です。
一般的に食物繊維は消化しにくいことで知られていますが、難消化性デキストリンはその名の通り食物繊維の中でもさらに消化することが難しい成分となっています。そのため、食物繊維の中でも消化を遅らせる効果が期待でき、血糖の上昇を抑える効果も期待できます。
お店で売られている「血糖値を下げる」効果をうたっている飲み物の多くは、この「難消化性デキストリン」を配合した飲み物となっています。
抗酸化作用は、血糖値を下げる!?
血糖値を下げるものとして、ネット上でもよく掲載されているのが「お酢」「コーヒー」「オリーブオイル」などといった、「抗酸化作用」があるとされているものです。
お酢メーカーである「ミツカン」で示しているデータによると、白米とともにお酢を大匙一杯摂取した方は、そうでない方に比べて優位に血糖の上昇を抑えられたというデータを掲載しています。
抗酸化作用は確かに「血糖値を下げる機能を促進する」働きがあります。しかし、これらの作用がすべての方に効果があるかは、確認できていません。
また、紹介されているものは過度に摂取すると、カロリーを取りすぎてしまったり、胃腸を傷つけてしまう恐れがあります。そのため、血糖値を下げることを目的としてこれらを積極的に摂取するよりは、バランスよく日常の食事に取り入れる程度にすることを、お勧めします。
カロリーゼロ飲料は血糖値が気になる方が飲んでも大丈夫?
飲むと甘味を感じるのに、カロリーがゼロというものが多く売られています。これらは「人工甘味料」を使用しており、確かにカロリー自体はありません。
しかし、これらが開発されてからまだ日が浅く、今後どのように血糖および人体に影響を及ぼすかは研究段階です。よって、血糖値が気になる人に積極的におすすめはできません。
確かに血糖値の上昇は、カロリーがあるものに比べて少ないことは事実です。しかし、「カロリーゼロ」と表記するためには「100mlあたり5キロカロリー以下」であればよいので、0キロカロリーだと思っていても、実際は数キロカロリー摂取している可能性があります。そのため、「カロリーゼロだからいくら飲んでも大丈夫」ということではないという点も、注意が必要です。
[surfing_su_box_ex title=”カロリーゼロを過信してしまったばっかりに…” box_color=”#79410b”]炭酸飲料が大好きだったAさん。糖尿病と診断された後は、大好きだった炭酸飲料を「カロリーゼロ」と表記されているものに切り替えて、日々炭酸飲料を楽しんでいらっしゃいました。
しかし、いくら食事や運動を頑張っても、なかなか体重や血糖値にその効果が出てきません。
「こんなに頑張られているのに。」
不信に思い、詳しくお話しを聞いてみると、「食事の前後や運動直後にカロリーゼロ飲料をたくさん飲んでいる。一日3本は飲む」とのことでした。
カロリーゼロは全くカロリーがないと勘違いされていたので、そうではないこと。そして、炭酸飲料の過度な摂取は満腹感を与えますがすぐに空腹を覚えてしまうため、かえって食事量が増えてしまう恐れがあることを説明しました。
カロリーゼロ飲料を控えた結果、Aさんの体重および血糖値はみるみる下がり、今では定期的な通院だけで、薬による治療は行わなくてもいいレベルとなりました。
[/surfing_su_box_ex]このように、カロリーゼロを過信してしまうことで、自分の努力を無駄にしてしまうことがあります。カロリーゼロ飲料は積極的に摂取しないことを、お勧めします。
お茶や飲み物を飲む時間帯やタイミングは?
血糖値を下げる効果が期待できる飲み物として、緑茶などの「食物繊維を多く含む飲み物」をご紹介しました。血糖値をより下げる効果が期待できるようにする、時間帯やタイミングについて、ご紹介していきましょう。
「暖かい飲み物」を「食前」に飲む
血糖値の上昇を抑えるお勧めの飲み物には、食物繊維を多く含んでいます。そのため、食事の前に摂取することで食事による血糖の上昇を抑える効果を発揮しやすくなります。
特に暖かいお茶にすると、満腹感を得やすくなるために食事の量そのものを少なくする効果も期待できます。そのため、暖かいお茶を食前に飲む、というのがおすすめとなります。
血糖を気にする場合は「スポーツドリンク」は避ける
スポーツをする際などによく飲まれている「ポカリスエット」や「ヴァ―ム」といったスポーツ飲料ですが、血糖値を気にしている方にはお勧めできません。なぜなら、スポーツ飲料には疲労回復の目的で多くの糖分が含まれているからです。
血糖値を下げるための運動は、スポーツドリンクを飲まないともたないような激しい運動でなくても、十分効果が期待できます。そのため、水分補給にはお茶や水といったもので補うように心がけ、運動中に糖分を極力摂取しないことが大切です。
まとめ
巷では「血糖値を下げる」という効果をうたっているものが多くあります。しかし、一番血糖値を下げる効果が期待できるのは、「バランスのよい食事を3食しっかりとり、間食をしない」ことと、「適度に運動をする」これに尽きます。
「血糖値を下げる」という効果のあるものは、あくまでそれらの働きを「助ける」効果であり、直接血糖値を下げるものではありません。「これを採れば血糖値が下がる」というものはありませんので、その点をしっかり把握した上で、上手に付き合ってくださいね。
下記のページでは、血糖値の上昇を緩やかにする食べ物をご紹介していますので、合わせてご覧ください。