血糖値が正常化どうかを、健康のバロメーターにしている人も多いのではないでしょうか。実は健康診断の結果で血糖値が正常だったからといって油断できないことが、最近の医療研究で分かってきました。
その最新の医療情報によると、空腹時の血糖値が正常であっても、血液中に血糖値スパイクという万病の素が潜んでいる可能性があることが、懸念されていると言うのです。
では、血糖値スパイクとはどのような状態のことなのか、なりやすい人やチェック法、症状やリスク面、予防する為の対策法など、徹底解説していきます。
血糖値スパイクとは?
通常、血糖値は上がったり下がったりするもので、特に食後に糖を吸収することで血糖値が上がることは、正常値の範囲内であれば問題ありません。しかし、血糖値スパイクとは、食後に血糖値が正常値を超えて急に上がることを言い、健康へのリスクもあることから、注意が必要なのです。
スパイクは、英語で釘や尖ったものを表す単語ですが、血糖値の変化をグラフで示すと、血糖値の上がり具合が釘のような形で表されることから、血糖値スパイクまたはグルコーススパイクと言われています。
血糖値スパイクは、通常の検査では高血糖と診断されない人でも起こることがあり得るので、医療機関によっては「食後高血糖」という言葉で示すこともあります。
血糖値スパイクのチェック法は?
健康診断では、朝食を抜いて空腹時の血糖値を測定することはご存知でしょうが、血糖値スパイクの判断材料となる食後の血糖値を測定することは、通常の健康診断では行いません。
血糖値スパイクは次のような人がなりやすいと言われているので、心当たりのある人は医師に相談して検査を受けてみましょう。
血糖値スパイクになりやすい人
[surfing_su_note_ex note_color=”#ffffff”]- 糖尿病を患っている親戚がいる人
- 太っている人
- 極端にやせている人
- 喫煙習慣がある人
- 運動をほとんどしない人
- 甘いものが好きでよく食べる人
血糖値スパイク危険度チェック
NHKでは、10月8日の「糖をはかる日」に合わせて、血糖値スパイクについて取り上げましたが、その中で、九州大学の研究者と共同で作成した血糖値スパイクの危険度を判定するチェックテストを紹介しています。
このチェックテストはNHKのホームページにも載せているので、ぜひ一度判定してみてください。
参照URL:http://www.nhk.or.jp/special/kettouchi/check/index.html
血糖値スパイクの検査方法
血糖値スパイクの疑いがある場合、医療機関で希望すれば検査をしてもらえます。血糖値スパイクの検査は、「経口ブドウ糖負荷試験(OGTT)」という方法で行います。
OGTTは、通常の糖尿病の検査でも行いますが、空腹時の血糖値を測った後に、75gのブドウ糖液を飲み、その後30分ごとに2時間後までの血糖値を測ります。
日本糖尿病学会の「糖尿病治療ガイド2014-2015」によれば、2時間後の血糖値が140mg/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)未満であれば正常であると言えます。ちなみに、200mg/dL以上だと糖尿病、140~199mg/dLで境界型糖尿病と診断されます。
血糖値スパイクになるとどのような症状が出るの?
血糖値スパイクが起こる人は、2型糖尿病の予備軍になるリスクが高いと言われている他、食後に急激に血糖値が上がるというその症状自体が身体に悪影響を及ぼします。
血糖値スパイクになると、急激な血糖値の上昇を抑えようとして、血糖を脂肪に変えようと働きかけます。そうなると、軽い低血糖が起こり、次のような症状が現れることがあります。
[surfing_su_note_ex note_color=”#ffffff”]- 頭痛
- 眠気やだるさ
- 目のかすみ
- 空腹感
血糖値スパイクが引き起こすリスク
血糖値スパイクになると、急激な血糖値上昇により、細胞を傷つけてしまう「活性酸素」が体内に発生します。この活性酸素が血管の壁を傷つけてしまうと、免疫細胞が血管の内側を厚くして修復しようと働きかけます。そうなると、壁の厚みによって血管が狭くなり、血液の流れが悪くなって動脈硬化が起こるのです。
動脈硬化が脳や心臓で起こることで、脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こし、突然死を招くこともあると言われています。
皆さんが周知しているように、血糖値をコントロールするためには、すい臓から分泌されるインスリンというホルモンの存在は欠かせません。
しかし、先天性の体質や生活習慣によって、もともと細胞が糖を吸収する能力が低下している場合があり、インスリンがどんなに働きかけても、上手く糖を吸収できないことがあるのです。そのような状態で血糖値スパイクが起こると、糖を吸収して血糖値を下げるために、すい臓は過剰にインスリンを分泌させます。
このように、インスリンが体内に多い状態になると記憶力が衰えやすくなり、認知症を引き起こすことがあります。さらに、インスリンは細胞の増殖を促すため、がん細胞の増殖を促してしまうこともあります。
血糖値スパイクを予防するための対策法は?
食後に軽めの運動をする
食後に運動することで、血液中のブドウ糖がエネルギーとして使われるので、急な血糖値の上昇を抑えることができます。継続することが大切なので、ウォーキングなどの軽めの運動を食後30分~2時間ほどの間に行うようにしましょう。
低G1食品を食事に取り入れる
G1(グリセミック・インデックス)値とは、食後の血糖値の上昇度を示す値のことで、ブドウ糖50gのG1値を基準にして、高G1食品と低G1食品に分けられます。食後に血糖値を上げにくい低G1食品には次のようなものがありますので、意識して食事に取り入れるようにしましょう。
[surfing_su_note_ex note_color=”#ffffff”]低G1食品のセカンドミール効果
G1を世に広めたトロント大学のジェンキンス博士は、最初の食事が次の食事(セカンドミール)の後の血糖値に影響を及ぼす、「セカンドミール効果」があることを持論としています。その持論によると、低G1食品を取り入れた食事を最初に取るとその食事の後だけでなく、次の食事の後も、血糖値の上昇を抑えられるというのです。
大塚製薬では、このセカンドミール効果を検証するために、実験を行っています。
参照URL:http://www.otsuka.co.jp/health_illness/gi/question4/
その実験によると、1食目に低G1食品の大豆焼き菓子を食べたグループを、せんべいを食べたグループや何も食べなかったグループと比較すると、2食目の市販栄養食品を食べた後の240~300分後の血糖値が明らかに低いことが分かっています。
時間をかけて食事をする
仕事が忙しいと昼食をとる時間がないのは分かりますが、お腹が膨れるおにぎりなどの炭水化物をサッと食べる、という食生活では、血糖値スパイクになるリスクが高くなってしまいます。食後の血糖値上昇をゆるやかにするためにも、ゆっくり食事をすることを心がけましょう。
さらに、1日3食のうち、1食でも抜くと、その次の食事の時に血糖値スパイクが起きやすくなっています。忙しくても1日3食規則正しく食べることが大切です。
食べる順番にも気をつける
同じメニューを食べても、次のような順番で食べることによって血糖値の上昇を抑えることができます。
[surfing_su_note_ex note_color=”#ffffff”]- サラダや酢の物など野菜やキノコ類、海藻類を食べる
- 肉や魚などのメインディッシュを食べる
- 主食となるごはんやパン、麺類を食べる
最初に水溶性食物繊維を含む野菜を食べることで、小腸での糖の吸収を穏やかにする効果が期待できます。
次に糖の少ないタンパク質を食べることで十分にお腹が満たされるので、最後に炭水化物を食べる時には、少ない量で済ますことができ、結果的に食べ過ぎ防止にもなります。
まとめ
血糖値スパイクの危険度が高いと判定された人でも、上述したような対策を継続することで、食後の血糖値が上がりにくい体質に変えることができます。
危険度が低いという判定の人も対岸の火事を思わないで、血糖値の変化を意識したり関心を持ったりすることで、生活習慣を見直すきっかけにしてみてください。