コグニサイズという運動をご存知ですか?様々な要素を含んだ運動で、認知症を予防する運動として注目を浴びているエクササイズです。
コグニサイズとは実際どんな運動なのか、どうすることで効果が得られるのか、詳しいやり方についてもまとめてご紹介します。
コグニサイズとは?
コグニサイズとは、国立長寿医療研究センターが開発した運動です。
身体を動かす運動だけでなく、計算など頭を使うようなエクササイズと組み合わせ、認知症の発症を遅らせることを目的としています。
英語のCognition(コグニション=認知)とExercise(エクササイズ=運動)を組み合わせて「コグニサイズ」と呼んでいます。
高齢者でも出来るように運動と頭を働かせる課題を組み合わせ、日常生活にはない動きを取り入れたり、頭を使うことで、認知症の予防にしようというものです。
筋肉を鍛えるような、激しい運動ではありません。
コグニサイズは運動と認知課題を同時に行うことで脳の働きを活発にします。これをデュアルタスクといいます。
神奈川県、香川県、滋賀県彦根市などは自治体をあげてコグニサイズの普及を目指しています。介護施設や福祉施設で積極的に取り入れることで、住民の認知症予防に役立てようとしています。
コグニサイズを行うことで期待できる効果は?
コグニサイズは認知症を予防するための運動とのことですが、実際どのような効果が期待できるのでしょうか。
運動をすることで脳の萎縮が減少
認知症とは脳が萎縮してその認知機能が段々低下していく症状ですが、高齢であっても運動することで脳に良い影響を及ぼすことが分かっています。
平均年齢75歳の軽度の認知症患者に1日90分の運動を週2日、6ヶ月間実施しもらったところ、脳の萎縮や記憶力が改善された、ということです。
参考>https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23585901
一緒に頭を使うことがポイント
運動はもちろん健康にいいものですが、コグニサイズが他の運動と違うところは、頭を使うということを組み合わせている点なのです。
脳を活性化させるためには、単純に運動だけするよりも脳も一緒に使った方がいいということがわかっています。
実際、臨床試験でもコグニサイズで脳の萎縮を防いで活性化できるという効果が出ています。
参考>http://www.rieti.go.jp/jp/events/bbl/16070701.html
実際やってみた人の感想
臨床試験などが進んでいるコグニサイズですが、実際にやってみた人の感想を見てみましょう。
- 記憶力が向上した
- 集中力がアップした
- 物忘れが改善した
などの、脳に関する機能向上を感じている人が多いようです。
また、
- 身体が軽くなった
- 肩こりが良くなった
など、健康の増進にも役立っているようです。
効果を出すためのポイント
コグニサイズで効果を出すためには以下の3つのポイントを守ってください。
- 運動はやや息が上がるくらいのペース
- 1日30分を週に3日
- 計算などで迷っても身体の動きを止めないこと
1日30分は継続していなくても大丈夫です。こまめに10分×3回など、小分けにしても効果はあります。
コグニサイズで大事なことは、思いついた時にたくさんやるのではなくて、数ヶ月に渡って継続して行うことです。それが脳や身体への刺激となって、認知症の発症を予防するのです。
コグニサイズは上手にやることが目的ではありません。
あくまでも脳を活性化させるためのものなので、少し慣れてきたら違うエクササイズをしたり、難易度をアップさせるなどして、常に「新鮮だ!」と感じるようにしてください。
軽度認知障害(MCI)は認証予備軍と呼ばれていますが、早い人だと40代から発症するといわれています。
歳を取ってからで大丈夫、というのではなく、症状が出る前からコグニサイズを実践することで、将来の認知症を予防できるのです。
コグニサイズのやり方がわかる動画は?
それでは実際にコグニサイズをやってみましょう。動きはそれほど難しくないのですが、頭の活動と組み合わせると難易度がアップ。もしかしたら若くても出来ないかもしれません。
意外に難しい、コグニステップ
誰でもできると思いきや、意外に難しいコグニステップのやり方です。是非試しにやってみてください。ステップを踏みながら、3の倍数で手を叩きます。
最初は足踏みだけからスタートしてみます。慣れてきたら、ステップを変えて難度を上げていきます。
- 1で右足を右に出し、2で元に戻します。
- 3で左足を左に出し、4で元に戻します。
- 5で右足を前に出し、6で元に戻します。
- 7で左足を前に出し、8で元に戻します。
このとき、3と6、3の倍数の時に手を叩きます。これを続けてやってみてください。
こちらの動画を参考にどうぞ。
最初は手を叩くだけで精一杯かもしれませんが、続けるうちに慣れてきます。そうしたらステップを早くする、数を100から逆に数えるなどして、難易度を上げていきましょう。
3の倍数で手を叩くバージョンが出来たら、今度は4の倍数で「あいうえお」と声に出してみましょう。
「1、2、3、あ、5、6、7、い」と、数字の代わりにあいうえおを挟んでいきます。これはなかなか難しいです。
膝や腰が痛い場合には歩いたりステップを踏んだりすることが難しいかもしれません。その場合は、椅子に座って、足だけ動かしながらやってみてください。
コグニウォーキング
ただウォーキングするだけでなく、脳も活動させながら歩くのがコグニウォーキングです。
例えば、
- 計算しながら歩く(100から3ずつ引いていくなど)
- 川柳、俳句を考える
など、何かを考えながら歩くのです。
2人以上で歩くなら、しりとりをしても良いでしょう。歩くスピードは、やや早めに歩きつつも、隣の人と話せる程度がおすすめです。
これも慣れてきたら難易度を上げていきましょう。最初は一桁の足し算や引き算でも構いませんが、計算の桁を増やすと難しくなります。
200から9ずつ引く300から11ずつ引くなど、計算の難易度を上げると脳がより活性化するでしょう。
コグニラダー
はしごのような枠の中を歩数や動きを決めてステップを踏んでいく運動です。基本の足踏みのやり方をご紹介します。
- 枠の前に両脚を揃えて立ちます。
- 右足を踏み出し、左足を揃えます。
- 同じ枠内に右足を1歩前に出し、左足を揃えます。これで1枠4歩になります。
- 足を踏み出す時に「1.2.3.4…」と声を出し、これを続けます。
声を出して数を数えながらやるのがポイントです。足を一歩枠の外に出すなど、バリエーションはいくらでも作れます。
踏み台を使ったコグニサイズ
踏み台を使ったステップ運動をしながら、しりとりをしていきます。ステップより運動の強度も上がりますし、一人でしりとりするのは結構難しいものです。
グループでしりとりをします。ステップは上って降りるだけの簡単なものですが、グループになると格段に難しくなります。
ただのしりとりではなく、前の2人分に自分の答えをプラスするので、1人前の人の答えも覚えておかなくてはなりません。
同時に足を動かさなくてはいけないので、なかなか難易度が高いです。
コグニサイズにあったら便利な道具
コグニサイズをするためにあったら便利な道具をご紹介します。ただし、これらの道具は必須でありませんので、必ずしも用意しなくても大丈夫です。
踏み台昇降運動をする時に、安定したステップ台があると便利です。インターネットやホームセンターなどで2千円くらいで購入できます。
ただし、雑誌などを重ねて作ることも出来ます。
高さが10cmくらいになるように、雑誌を互い違いに重ねてガムテープなどでしっかり固定してください。
コグニラダーを行う時にあったら便利なラダーですが、本とセットになって販売されています。
出典:amazon.co.jp
もしくは、1マスが縦65cm、横45cmくらいの大きさで床にテープなどを張り、枠を作ることが出来れば、それでも代用は可能です。
まとめ
高齢者のための運動などといわれていますが、実際やってみると結構難しいですし、疲れます。
運動不足の人は、将来の認知症予防も兼ねて、ぜひ日常生活に取り入れてみるといいと思います。